……と、こんなで終わると、なんだすばらしいレンズじゃないか、などということになりそうですが、大変古いものの上、状態が「難あり」です。
やっぱりというか、さすがにというか、開放付近ではアマアマになってしまいました。周辺部での画像の流れもはっきりとわかるレベルで出ています。
しかし、だからといってこのコムラーに価値が全くないわけではありません。そこが重要なところです。ひたすらシャープに精密に写っていればイコールいい写真であるなどという図式は虚妄そのものであり、窓から投げ捨ててしまえ、というようなものではないでしょうか。
これは、こういうレンズです。
いや、もともとはこういうレンズではなかったのかもしれませんが、50年近く経って、これはこういうレンズとして発酵し、醸成されたのです。面白いことではないですか。
うまく条件が合えば、この世のものならないような印象的な情景を描き出しそうな気配を感じました。雨の日に高感度フィルムを使って、なおかつモノクロの高温現像でちょっと荒らしてみたりしたらいいかもしれない。そんな風に、誘うところがある描写でした。