オールドレンズに「何を求めるか」は人それぞれだと思うが、自分的には近代レンズにない味わい深い描写が欲しい。「味」は濃ければ濃いほどよく、場合によっては暴れ気味の描写になっても全然かまわない。
その点、このキヤノン25ミリF3.5の描写は期待を裏切らない。逆光気味では光源のニジミがすごいし、強いサイドライトでは光がシャワーのようになって画面内に降り注ぐのだ。どちらも近代レンズではありえない効果というか欠点だが、本来は見えないはずの「光」をニジミやゴースト、フレアなどで可視化してしまうのは痛快ともいえる。
キヤノン25ミリF3.5の登場は今から55年前の1956年。キヤノンのサイトには「当時このレンズは25ミリの焦点距離レンズでは世界最高の明るさであった」とある。トポゴンタイプというかなり特殊な光学系でありながら明るさも追った結果、全方位的に性能のいいレンズにはなっていないと想像できるが、だからこその個性的な描写が今となってはウレシイのだ。